わたし、結婚するんですか?
 突き落とされたのだろうか? と思い、

「殺人っ!?」
と思わず叫ぶと、

「そうだな」
と遥久も頷く。

「俺を狙った殺人かな」

 死ぬかと思った……と遥久は言うが。

 いやいやいや。
 確かに、危険だったし、申し訳なかったですが、突き落とされたのなら、狙われたのは私でしょう、と思っていると、そんな洸の顔を見た遥久は、
「莫迦か。
 お前は自分で落ちたんだ。

 目撃証言もある」
と言い出す。

「お前は、十二時四十七分、三階のベランダで、事業部の浜崎と、またしょうもない話をしていたが」

 誰だ。
 そんな細かい目撃証言を出してきやがったのは……。

「いつものように、手を打って大笑いしたら、そり返り過ぎて、落ちたらしい」

「……その人は莫迦なんじゃないですか?」

「莫迦なんだろう」

 客観的におのれのことを聞くとよくわかるだろ、と言われてしまう。

 なにか口調が徹頭徹尾、喧嘩腰でムカつくが、この人の場合、いつものことだった。

 助けていただいたのは確かだし。

 向こうが死んでいたかもしれないのも確かだ。
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