わたし、結婚するんですか?
 小さな爪が床に擦れるような音。

 小さな顔に対して、目の比率がおかしいんじゃないかと思うくらい、大きな黒い瞳をしたふわふわの仔猫が飛び出してきた。

 白と淡いベージュの毛。

 ダックスフンドのように足が短い。

 いやーっ。
 可愛いーっ、と叫びそうになる。

 そんな洸の顔を見て、遥久は言ってきた。

「やはりな。
 俺と付き合いだしてからのことを丸ごと忘れているようだから、自分の猫のことも忘れていたんだろう」

 猫がひとりでお留守番をしているから、帰れ帰れと急かしていたようだった。

 自分の猫、と遥久は洸に言った。

 だが、猫は洸ではなく、まず、遥久の方へ駆け寄り、短い足でジャンプする。

 べちっ、と遥久の膝下にぶつかり、そのまま滑り落ちていた。

 そんな猫を腰をかがめた遥久が撫でてやる。

「よしよし、ネコ。
 いい子にしてたか?」

「……名前はないんですか?」
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