呼び名のない関係ですが。
頭のなかでは、最近何か見られたらまずい要素があったかどうか、目まぐるしく記憶をたどりまくっているけども。

こんなとき、自分の表情筋の硬さを便利だと、哀しくも思ってしまう。

林田さんはケラケラと笑いながら、キラリと光るデコネイルを自分の唇に指をあてた。

「じゃあ先に聞いちゃいますけど、三峰主任って高遠さんがお付き合いしてる人とかって、もしかして知ってますぅ?」

上目遣いに私を見る林田さんは、いわゆるステキ女子ってヤツだ。

オフショルダーのバックリボンが付いたストライプのブラウスと、ホワイトカラーのレースのスカートは華やかで、地味なスーツしか着ない私とは対照的。

正直、異人種にすらみえてくる。

「……知るわけないでしょ。大体、何で私が?」
「前だって飲み会に来なかったわけを聞いてくれたじゃないですか。何だか三峰主任って高遠さんと仲が良いみたいだしぃ」

仲が良い?

そんな風に見えるものなのかと、思わず小首を傾げた。

「私、高遠さんと同期ですけど、話し掛けたって軽くかわされるだけなんですからね。前にふたりで幹事をしたときだって、三峰主任がひとりじゃ大変だからって高遠さん、引き受けたって聞きましたよ。仲も良くなかったら、そこまでしてあげられないんじゃないです?」

林田さんの口調は笑いを含んでいたけど、目は決して笑っていない。

彼女が前々から何かと高遠さんを意識していたのを思い出すと、背筋の辺りがヒンヤリとしてきた。
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