呼び名のない関係ですが。
「……このひと、三峰紗綾さん。すごーく出来る会社の先輩」

ええっ、なんて雑な紹介。

S級の出来た後輩にそんな言い方をされると、誉め言葉を通り越して単なる嫌味にしか聞こえない。

でもこちらの何とも複雑な気持ちに気付くはずもない彼女は、私の名前を丁寧に復唱した。

「三峰紗綾さん、ですね。はじめまして、相田樹希(あいだいつき)です。さっきの説明通りこの偉そうなヤツの昔からの友人でして」

この偉そうなヤツと指を指された高遠さんは「ケッ……そのうち身内になる腹積もりのくせに」と、憎まれ口を叩いてから、店員さんに手で合図をした。

高遠さんは、飲み物や料理を適当に注文をしはじめると、相田さんは顔をしかめた。

「うわっ、飲み物まで勝手に頼んでる。三峰さん、大丈夫なんですか」
「いーんだよ。お前みたいに節操なく飲む訳じゃないから」

実のところ、私の体はアルコール度数の高いものを受け付けないように出来ているようで、飲むこと自体は嫌いじゃないのにビールか柑橘系のサワーくらいしか飲めない。

大抵は最初にビール、次にサワーを一杯飲むだけで文字通り、いっぱいいっぱいになってしまう。

だから高遠さんはいつものように注文してくれたつもりなのだけれど、そんなことを知らない彼女は口をへの字に曲げて、横暴な奴でホントすみません、と私に頭を下げた。

「いえ。あの……お構いなく」

当たり障りのない説明をしてくれるんじゃないかと、小首を傾げて隣の高遠さんをチラリと見る。
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