呼び名のない関係ですが。
2.捨てる男あれば拾う男あり!?

“間が悪すぎる”と思うことって、人生のなかで一体何度体験しなければならないんだろ。

私にとっては今がまさしく、人生何度目かの『それ』だ。

長年付き合っていた男との身もふたもない別れ話を、どうやら他人にさらしていたようだ。

それもよりにもよって後輩に。

—― いっそのこと透明にでもなって、このいたたまれない場面からシュルッと消えてしまいたい。

そんなファンタジーなことを頭の中で考えてみても、現実にはそんなことが起こるわけもない。

知らんふりを決めて逃げ出そうかとも思ったけれど、話を聞かれたという不安を、先延ばしにして開き直れるほどの図太い神経は持ち合わせていなかった。

潔く腹を括った私は、重い足取りで後輩の座るベンチへと近付いた。

仕事がら折衝や駆け引きの多い私が、陰で鋼の心臓を持つ女のように言われているは知っている。

付き合っていた相手にすら、そう思われていたのは虚しいけれど。

彼には『可愛げがない。味気がなくて寝た気もしない。最近は、ヤル気にもなれなかった』と、捨て台詞を吐れた。

他にも何か言っていた気がするけれど、あとは脳ミソが受け付けず耳をスルーしていく。

自衛本能ってやつね。

実際の私は、酷い言葉を投げられれば傷付くし、人並みに凹む。

予感していた別れでさえ、も。

今も心臓の辺りをスパンと真っ二つに切られたみたいに、胸がスカスカしてる。

それでも足を踏ん張って、胸に詰まった苦さをやり過ごすことしか出来ない。
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