俺様社長の重大な秘密
珈琲の準備が出来ると、社長室にそれを運ぶ。

ノックをしたのち、ドアを開けて、幸は一瞬動きを止める。

…美男美女のカップル。

とてもお似合いだ。

楓に絡みつく令嬢、小百合。

まんざらでもなさそうな楓の顔に、幸は心を打ち砕かれたような気持ちだった。

「…丸岡」

楓は小百合をのけようとするが、離れない。

幸は作り笑いを浮かべると、テーブルに珈琲を置いた。

「…珈琲をお持ちしました。こちらにおいておきますね」

「…丸」
「…失礼します」

無駄口は叩かず、幸は笑顔を顔に張り付けたまま、部屋を出ていった。

ドアを閉めたとたん、深いため息をつく。

「…あぁあ、まだ、好きにならなくて良かった」

その言葉を口にすれば、ポトリと涙が落ちた。

「…なにやってんだ、バカ。しっかりしろ、私」

ごしごしと目を擦ると、給湯室にお盆を置き、秘書室に戻る。

「…丸岡さん、大丈夫、ですか?」

西園が、心配そうに、幸を見る。

「…え?大丈夫ですよ…でも、今はお取り込み中みたいなので、社長室に戻れなくて」

幸の言葉に、目を見開く西園。

「…ここで、仕事をしてもいいですか?」
「…勿論。隣のデスクを使ってください」

西園の言葉に、幸は安堵のため息をつき、そこに座って、西園に頼まれた仕事をこなしていった。
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