俺様社長の重大な秘密
話が終わって社長室から楓と小百合が出て来て、幸の顔が一瞬歪むが、それでも仕事用の顔に戻し、小百合に一礼した幸。

西園も、頭を下げると、満足そうに、小百合は帰っていった。

「…丸岡」
「…何でしょうか、社長」

作った笑顔が今にも剥がれてしまいそうだ。

「…社長室に戻れ」
「…いいえ、西園さんに聞かなければ分からない仕事をしておりますので、このままここで」

幸の言葉に、楓が怒りを露にする。

「…丸岡」
「…社長、この仕事だけは、ここですることをお許しください。お願いします」

幸の気持ちを察した西園が、すかさずフォローを入れた。

「…勝手にしろ」

捨て台詞を吐くと、楓は社長室に戻るなり、大きな音をたてて、ドアを閉めてしまった。

「…西園さんまで巻き込んでしまって申し訳ありません」
「…何を言うんですか?丸岡さんは、私の後輩なんですから、守るのは当たり前ですよ。気にしないで」

西園の優しさに、幸は目を潤ませた。

…この日を境に、幸、断固として、社長室に戻ろうとはしなかった。

怒っていた楓も、最後は諦めてしまったのか、愛想尽かせたのか、もう、何も言わなくなっていた。

「…これで良かったんだよね」

自分に言い聞かせるような言葉を、自分に投げ掛ける幸。

強引に連れ帰られていた楓のマンションにも、用があるからと、ずっと自宅アパートに帰っていた。

このまま、楓が幸に興味をなくすだろうと、幸もまた、楓への微かな想いもなくなるだろうと思っていた。

のに。
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