臆病者で何が悪い!
「希、ちょっとペース早いんじゃない? ソフトドリンクも注文しておこうか?」
「だーかーら。沙都はそうやっていつも世話焼き過ぎなの。私は、久しぶりに沙都に会えて楽しいの。だから、お酒も進んでるの。それだけだよ?」
なら、どうしてそんな痛々しい笑顔をしているの――?
「――ね え、希、この前持ってたバッグだけど」
希の隣の席に座る香蓮が、希に話を振る。その隙に、勝手にソフトドリンクを注文しておくことにした。そして、それをそっと希の前に置いておく。このままのペースで飲ませたら、酔いつぶれてしまう。
「今日本当に、飯塚どうしたんだ?」
「うん……。とりあえず、注意して見ておくから」
そう桐島に告げて、もう一度希を見つめた。
「希。本当に、もうお酒は止めておきな」
飲み会が始まって一時間半が経過した。希はもう、見てすぐわかるほどに酔っぱらっていた。
「なんで。美味しいお酒が飲めているんだから、止めないでよ。そんなことより、沙都も飲みなよー。久しぶりに一緒に飲めるんだからぁ」
「――もう、ダメ。そんな飲み方したら悪酔いする」
私は無理やりに希から酒を取り上げた。
「いやだって言ってるでしょっ!」
振り払われた手が宙を舞った。
「希……」
さっきまで不自然なほどに笑い続けていたくせに、その顔は酷く歪んでいた。
一次会が終わった時には、希は自分で歩けないほどに泥酔し切っていた。
私が傍についていながら、結局止めることができなかったのだ。
「希、大丈夫? しっかり」
店先に座り込んで、何かを言っている。こんな姿の希を見るのは、出会ってから初めてかもしれない。