臆病者で何が悪い!

「昨日、本当に希が来たの。今日の朝帰ったのも嘘じゃない。本当は昨日田崎さんが希を迎えに来たんだけど、希が寝てしまっていてそのまま泊めることにした。希は、今朝一人で帰って行ったんだけど、希がちょうど帰った後に田崎さんが来て。本当だよ? 信じて!」

「沙、都……」

力が抜けたように座り込んだ生田が、我に返ったように、大きく息を吐いた。

「俺、何やってんだ……」

そして、額に手を置いて項垂れていた。

「……ごめん。おまえを疑うなんてな。どうかしてた」

俯いたまま私の顔を見ない生田に、胸が苦しくなる。

「何があったって、おまえを疑うなんて――」

そんな辛そうな声を出す生田にもう一度腕を伸ばした。

「……ううん。いいんだよ」

「いや。悪かった。ごめん、沙都」

懸命に生田の背中に手を回す。そうすると、やっと生田の手のひらが私の背中に置かれた。

「最近、ずっと気張り詰めてて、余裕なくなってた……」

私の肩に顔を埋める生田を、目一杯抱きしめる。生田の腕が私の身体を軋ませるほどに強く抱く。痛みを感じるほどのその強さに、それ以上の痛みを胸に感じた。

「おまえに声を荒げるなんてな。失望しただろ――」

「失望なんてしない」

「こんなことで感情に飲まれた自分に、俺は失望したよ」

その弱々しい声に、その胸の鼓動に、私はたまらなくなって自ら生田の唇を塞いだ。

傷付け続けて、ごめんなさい。

無神経だった自分を今頃になって振り返るなんて。どうしようもないほどの自己嫌悪が私を襲う。

「……沙都」

生田が唇を離すと、至近距離で私の目を見つめた。でも、その目は怯えたように揺れていた。

「田崎さんは、おまえに――」

「なに?」

生田はその言葉の続きを言わなかった。

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