そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
「泣くほどでもないと思うんですが」

正直驚いた。彼が私を目の前にしても、あの胡散臭い笑みで隠すことなく悲痛な表情を見せるなんて。

「大丈夫ですよ。私は龍さんが飽きるまでここにいますから。どうせ現代には私の……」

居場所なんて無いんです、と口を滑らそうとしたところで口を噤んだ。



紅い三日月に照らされた彼の金の瞳が、剣呑な色を帯びている。


何者かを呪い殺さんばかりに。




「……龍さん」

寂しいんですか。恋しいんですか。

……何が、あったんですか。



「ずっと前からきみを守りたかった、側に置きたかったんだよ」


切なげなその言葉に、嘘のように心臓がドクリと動いた。





百万ドルの夜景とはいかないが、何処までも広がる、人型の式神達が暮らす家々の金の光が、ふうわりとこの城を照らしている。
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