そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
「ごめんね、ずっと握ってて。痛かったでしょ」

「あぁいえ……大丈夫ですよ」

龍さんがようやく私の手首を離した。もうその表情に不穏な色は無い。



「でもさ、ごめんね。きみがどんなに拒否しようと、元の世界に返すことはしたくないんだ」


そう言った龍さんの瞳はあまりにも哀しそうで。


「……あ、えっ?結月ちゃん?」

「すみません、こうしたくなったので」

私よりずっと背が高いその体を、精一杯包み込んだ。


「いっやぁ~嬉しいなあ!まさかきみからハグしてくれるなんて!」

「うるさい、ですよ」


龍さんは私が元の世界に帰ることを激しく拒否、拒絶している。



……そして彼でもマトモに泣くことがあるのだなと、少しだけ可愛らしいと思った。
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