そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
異界
ぱちり。目を開けた。

妙に体が温かい。このまま眠っていたい……


「ッ~~~~~!?」


そこで私は声にならない悲鳴をあげた。理由は簡単だ。私の背中から腹にかけてがっちりとホールドしている細腕のせいである。

「あ、起きた?」

私がばたばたともがき始めたので気づいたのか、細腕の主は笑いながらそう言う。

「あのっ、は、離してください!」

「いいよ?」

「えっ」

声の主は以外にもあっさりと私から離れた。私も慌てて身を起こす。どうやら布団に寝かされていたようだ。


声の主、彼はとんでもない美しさを兼ね備えていた。黒い燕尾服に、さらりと揺れる銀髪。そして貼り付けられた、胡散臭い笑顔。



「さて、きみには何と言うべきか……まぁ、


ようこそ、未来へ」


「……は?」

しかしその彼が、突然突拍子もない事を言い出す。

「……ココおかしいんですか?」

真っすぐ彼を見据えつつとんとん、と指先で頭をつつけば、彼は至極わざとらしく落ち込んだ表情をした。胡散臭い。とにかくわざとらしい。

「もー、君ったら酷いなあ……」

にこり。彼が笑った。




「ま、混乱もするだろうしすぐには信用できないと思うけど、一応伝えておくよ。



ここはきみが元いた時代から、99年後の未来だ」
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