キミが可愛いわけがない


「布施くんはなんで髪で顔隠してるの?」


布施くんの髪を湿らせながらママが話しかけるのを私はジッとベッドの上から見つめる。


「…小学生の頃、父に言われたんです。お前の目がムカつくって。それから、人と目を合わせたりするのが怖くて…あ、父とはもう一緒に住んでないんですけど…」


「そうだったの…」


「だから、今もこうして変わろうとしていることが少し怖い。柚希先輩が言うように、いい方向に進めばいいけど…」


変わることには、多少のリスクがつきものだ。だけど、それでも変わりたいと強く願うなら、その先にはきっと、いい未来が待ってる気がするよ。



「絶対大丈夫だよっ!」


「柚希〜あなた布施くんのこと応援するのはいいけど、自分のしなきゃいけないこと考えなくて済むからって布施くんといるんなら許さないからね?」


「ひっ、」


このタイミング、しかも布施くんがいる目の前で今年いちばんの怒りの笑顔を見せてるママに思わず声が出た。


< 213 / 238 >

この作品をシェア

pagetop