蜜月なカノジョ(番外編追加)

「受け取らない方が気の毒なくらいの様子に俺はそのハンカチを受け取って…そうしたらその女の子は『すぐそこにタクシーを止めてますから、それを使ってください』ってほんとに小さな声で言って。それと同時に逃げるようにその場からいなくなった。…最後まで一度も俺の顔を見ることなくね」
「……」

「最初は下心ありの女の子かもしれないって可能性もよぎったけど…考えれば考えるほどそんなことあるはずないってわかって。結局俺は彼女が拾ってくれたタクシーで病院に直行して。そのおかげですぐに元気になることができたんだ。そうしたら今度はその女の子のことが頭から離れなくなった。顔色の悪かったあの子は大丈夫だろうか、どうしてあんなに震えていたんだろう、お礼の一言すら言えなかった…って。ずっとずっと俺の頭の中をその子が埋め尽くしていった」

「ナオ、さん…」

「会いたいけどそんな偶然があるはずもなくて。気が付けば俺はその子にまた会いたいって、そんなことばかり言ってた」


どうしよう…手が…震える…

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