蜜月なカノジョ(番外編追加)

「そっかそっか。あいつが強引に事を押し進めたんじゃなくて、杏ちゃんが自分でそういう答えに辿り着いたのならよかったわ。ナオを選ぶも選ばないも杏ちゃん次第だけど、なんだかんだで2人すっごくお似合いだと思ってたからさ。うまくいってくれるなら私としてもそれが一番嬉しい」
「なんだかいつもいつも相談にのってもらってばかりですみません」
「そんなのいいのよぉ~! で? あいつはこれからどうするつもりだって?」
「あ…今のところナオさんのスタイルを変えるつもりはないって。…私のために」

自分で言うと自意識過剰みたいで恥ずかしくってたまらない。
でもナオさんはとてもとても真摯にそう伝えてくれた。
愛情たっぷりに。

「そっか。うん、私もそれがいいと思う。直斗自身すっかり『ナオ』が板についてるし、結局見た目がちょっと変わるだけで中身は同じ人間であることに変わりはないのよね。それに『ナオ』と『直斗』、それぞれにしか引き出せない杏ちゃんもいると思うし」
「それぞれにしか引き出せない私…?」

「そう。多分あなた達自身は意識してないだろうけどね。あくまで今のスタイルで心を通わせるようになったんだし、自分達が納得出来るまでそれを変える必要なんてないと思う。あいつがいつか完全に男に戻る時がくるなら、それは自然な形でそうなると思うしね」
「自然と…」

「うん。だから自分達らしいスタイルで愛情を深めていけばいいと思うわよ。だって杏ちゃんはナオとか直斗とか関係なしにあいつだから好きになったんでしょう?」
「…! はい!」

照れながらも力強く頷いた私に葵さんも本当に嬉しそうに頷いてくれた。
今までたくさん嫌な経験をしてきたけど、こうして心から理解してくれる人達に出逢えて…人生って捨てたもんじゃないんだなと心から思う。
どん底にいた自分にもう少しの辛抱だよ、頑張れ!って言ってあげたい。

< 164 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop