蜜月なカノジョ(番外編追加)

女が使い分ける表と裏の顔。
人を傷付けるとは到底思えないような笑顔を向けながら、水面下では恐ろしいほど陰湿に、執拗に相手を追い詰めていく。

目の前からいなくなるまでそのことに全く気づけなかった自分のふがいなさに、心の底から失望した。もしかしたら自分が気づいていないだけでこれまでも同じようなことがあったのではないか。そう考えると、もう自分に好意を寄せる女達を心から信用することなどできなかった。

だからそれからは女と個人的に付き合うということを一切やめた。
だからといって別に手当たり次第に遊んだわけでもない。もともと起業するという明確な目標を持っていた俺はそれを実現するために必死で、ぶっちゃけ女にかまけている時間などほぼ皆無だった。
だからそれ以降数年は全く女とは縁のない生活が続いた。


やがて友人達と立ち上げたIT関連の会社が軌道に乗り始めると、それに比例して少しずつ心にも余裕ができてくる。恋愛をする気は毛頭ないが、男の本能としてふと女が欲しくなるときがあった。
有難いことに世の中には同じような考えをもつ女性が存在していて、互いの利害が一致した女と一夜限りの関係をもつ、そういうことがたまにあった。もちろん女なら誰でもいいというわけではない。とにかく自分と同じ考えを持つ女、つまりは後腐れなくそれっきりにできるクレバーな女だけを選んだ。

これまで自分を悩ませてきたことを心配しなくていい身軽な関係は、自分のような人間には一番あってるのかもしれない。
本音で言えば誰かを愛し愛されたいと思うが、その結果またあんな思いをするくらいなら、一生一人でいた方が気楽で良かった。

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