蜜月なカノジョ(番外編追加)
ナオさんと出会ったのはそうやって私の精神が限界に近づいていた時。
繰り返される悲劇に職場と住むところを転々とし、やっとのことで落ち着ける場所を見つけられたかも…と喜んでいた矢先、自分の上司が妙な熱視線を送っていることに気付いた。一見人当たりのいい人だっただけに、きっと思い込みに違いないと何度も自分に言い聞かせた。
けれどその現実は脆くも打ち砕かれてしまう。
ストーカーされていると気付いた時、永遠にこんな運命に晒されるくらいなら、いっそのこと死んでしまおうかと本気で思った。
それを踏みとどまらせてくれたのは他でもないナオさんの存在だった。
行く度にじんわりと心と体を癒してくれるカプチーノの味と、それ以上の包容力で温かく私に接してくれたナオさん。
いつの間にか、与えられる苦しみよりも、ナオさんと一緒にいることで得られる喜びの方が勝っていることに気が付いたのだ。
ナオさんには私が極度の男性恐怖症だということは話していたから、あの一件があるまでも何かと私のことを気にかけてくれていた。カフェに行けば必ず女の店員さんが私の対応をしてくれていたし、用のついでだと言ってわざわざ家まで送ってくれることだってあった。
申し訳ないと思いながらも、心から私のことを心配して寄り添ってくれるナオさんの優しさに、私はその時から既に依存していたのだと思う。
だから同居を勧めてくれたことに驚きつつも、本心では喜んでいる自分がいた。