蜜月なカノジョ(番外編追加)

「あはははっ、あなたすっごく素直で面白い子なのね。お名前は?」
「あ…丸山杏といいます」
「杏ちゃんね。私は直…黒崎ナオよ。はい、こちらどうぞ」
「えっ? あ、いや、でも…」

仮にもオーナーである人間に突然名刺を出されて彼女はかなり困惑している。
俺だって客相手にこんなことをするのは初めてだが、何が何でもこの縁を切らしたくない。
この時の俺はそのことだけで頭がいっぱいだった。

「またカプチーノ飲みに来てくれるんでしょう?」
「えっ?」
「あなたはきっとうちと長いお付き合いをしてくれると思うから。だから私も含めてよろしくね」

我ながらなんて強引なのかと呆れかえる。
けれど彼女が驚いていたのはほんの少しの間だけで、そのうち俺がユーモアのある人間だと受け取ったのだろう。すぐに破顔すると、恐縮しながらも照れくさそうにその名刺を受け取ってくれた。

「あ、ありがとうございます…。なんだか手が震えてしまいます」
「あははっ、そこら辺にいるフツーの人間だから。また絶対に来てね? 私もあなたに会えるのを楽しみにしてるから」
「はいっ! また絶対に来ます」
「ふふ、待ってるからね!」

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