蜜月なカノジョ(番外編追加)

そして大きな変化はもう一つあった。

同居させてもらうようになって一ヶ月ほどが過ぎた頃、いい加減自立のために仕事をしなければと職探しを始めた私に、ナオさんが思いも寄らぬことを言い出した。

「うちのお店で働きなさいよ」

お店というのは他でもない、ここ『Bonheur【ボヌール】』のことだ。
フランス語で幸運、幸福を意味するこのお店は、その言葉通り私にたくさんの幸せを運んで来てくれた。その最たるものがナオさんの出会いだったわけだけど…なんとそのお店で働けというのだ!

とはいえ、今の私には正直接客業はきつかった。
特に男性のお客さんへの接客なんてムリっ!
男なんてこの世から全て消え去ってしまえばいいとすら思っているほど重度の恐怖症に陥ってしまっている今の私では、間違いなく迷惑をかけるだけ。だから仕事をするなら対人スキルが最低限度で済むものを探そうと思っていたのだけど…

「ここは私が経営するお店だから大丈夫。働いてる子もいい子ばかりだし、接客も女性限定で構わないから。杏ちゃんの傷を少しずつ癒すためにも、これ以上いい職場はないと思うわよ?」

甘い誘惑は続けられ…

「何より私が杏ちゃんに傍にいてほしいのよ。それに、何があっても杏ちゃんのことは私が守るから。だから私のためにもうちに来てくれないかしら?」

トドメにこんなことを言われちゃあ…


「よろしく、お願いします…!」


と答えない人はいなかったと思う。

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