蜜月なカノジョ(番外編追加)

杏の方からキスされるのも初めてなら、まるで襲われるような構図なのも全く意味がわからない。
ただ普通じゃありえないってことだけはわかる。

「あ、杏、マジでちょっと待って! 一体何が…」
「い、イヤですっ…!」
「えっ?」

何に対する「NO」なのかはわからないが、拒絶の言葉に俺は俺で敏感に反応してしまう。
とりあえず杏を止めようとしていたのを忘れてしまうくらいには。

「絶対、イヤです…! ナオさんに嫌われるなんて、絶対に…!」

脳内で「イヤです」の部分だけが何度も何度もリピートされていく。
肝心な部分はその後だったというのに、そのことが把握できるまでには幾分の時間が必要だった。

だから反応が遅れてしまったのだ。


「ナオさんに嫌われてしまうくらいなら、私はっ…!」


声を震わせながら杏が俺のパジャマを勢いよく開いたのと、ようやく彼女の言葉の意味を理解して俺が我に返ったのは、ほぼ同時だった。

< 232 / 400 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop