蜜月なカノジョ(番外編追加)

「立花は昔の同僚なんだ」
「…え?」

事情が全く把握できない私に、ナオさんが単純明快な答えをくれた。
でも、「ただの」同僚じゃないんだよね…?

「本当にただの同僚。多分杏が誤解してるようなことは一切ないから」
「え…」

まるで心の中を透視したかのようなその言葉にぱっと女性を見ると、肯定するためなのか激しく頷いている。

「ただの同僚なんだけど…立花には俺のせいでめちゃくちゃ嫌な思いをさせてしまったから」
「っそれは違う! 本当にごめんなさい! 私、あれからしばらくしてなんであんなことを言っちゃったんだろうって、ずっと後悔してて…!」

苦痛に耐えるように顔を歪めた女性はまた目を潤ませている。

「……ごめんなさい、どういうことなのか、全然わかりません…」

「ごめん、その通りだよな。杏にとって気持ちのいい話じゃないだろうけど…俺の過去として正直に話すな? 昔俺が関係をもった女でストーカー化した奴がいて。直接俺に何かをしてくることはなかったんだけど…いつどこで知ったのか、当時ただの同僚だった立花にその矛先が向けられてて。俺は全くそれに気付かなくて、知らない間に立花が酷い目にあってたんだ」

そう話すナオさんもまたとても苦しそうだ。
私もストーカー被害にあったことはあるけど、いつも自分がターゲットだった。
当然それ自体も辛いけれど、もし自分のせいで無関係な人を巻き込んでしまっているのだとしたら…その方がもっと辛いのかもしれない。

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