蜜月なカノジョ(番外編追加)
囁くようなその声は、たちまち私の全身を巡って心臓を撃ち抜いた。
…怖いだなんて感情は、どこを探してもなかった。
目の前でじっと私の返事を待つナオさんの手に自分の手を重ねて、ゆっくりと頷く。
「…ナオさん、私の全てをもらってくれますか?」
真っ直ぐに目を見てそう言った私に、ナオさんが瞠目した。
今度は返事を待つのは私の番。
しばらく驚いていたナオさんだったけれど、やがてはっと軽く息を吐き出して、自分の髪をくしゃっと掻き上げながら笑った。
「…まいった」
「えっ? …きゃっ!!」
首を傾げたと同時に体が宙に浮いた。
驚く私に微笑みながら、ナオさんは私を抱きかかえたままスタスタと軽い足取りで歩き出す。
聞かなくてもわかる。彼が向かう先は…
「もう、ほんとに杏には敵わない。いつも俺の想像以上の可愛さで骨抜きにされていく」
ふわりと柔らかなベッドに寝かされると、それに跨がるようにしてナオさんもベッドに上がった。降参とばかりに苦笑いしているけど、その目はさっきと変わらずとても真剣なものだ。
ベッドに横たわる私の頬にもう一度触れながら、
「杏の全部を俺にください」
そう言ったナオさんの言葉に、私の心は喜びに満たされていく。
「…はい。全部もらってやってください」
そう答えると、ナオさんはまたやられたと笑いながら、やがて私の唇へと舞い降りてきた。