蜜月なカノジョ(番外編追加)
カタンという音と共に部屋に入ってきた人物を見てドクドクと胸が騒ぎ出す。
そこに立っているのはいつものナオさんではなく、『本当のナオさん』。
自分からお願いしたにもかかわらず、動けずに硬直してしまった私の横に静かに腰掛けると、大きな手がそっと私の手のひらに重ねられた。
「…怖い? 怖いなら無理しなくても…」
「ち、違いますっ…怖い、わけじゃなくてっ…」
どうしても呼吸が荒くなっていく私の手を根気強く摩り続けると、その温かさに少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「…杏」
そうしてようやく冷静になったところで、ナオさんが優しく私の名を呼んだ。
その声はいつもよりほんの少し低い。
「……」
導かれるように顔を上げてしっかりと目の前の人を見つめる。
これで「彼」を見るのは3回目だけれど、これまでのことは頭が混乱していてほとんど記憶に残っていない。
こうしてきちんと向き合うのはこれが初めてだった。