蜜月なカノジョ(番外編追加)
サラリとした眉にかかるほどの長さの黒髪はまだ半分ほどが濡れている。
メイクも何もしていない顔は男性だとは思えないほど整っていて、葵さんが腹が立つと言っていた理由がわかるような気がした。
はっきりとした二重の目、高さのある鼻筋にほんの少しだけ厚みのある唇、つるっつるの肌。お風呂上がりというのもあってか、「女」としての手が加わっていないはずのナオさんは、その辺にいる女性よりもよっぽど色っぽく見えた。
体のラインのわかるTシャツ姿が直視できないくらいに。
それでも、目の前にいるナオさんは正真正銘「男」だった。
「名前…」
「え?」
「本当の名前は、何て言うんですか…?」
「………直斗」
「直斗、さん…」
繰り返すように呟いた一言に、何故かナオさんの頬が赤らんだ気がする。
「あの、年齢は…?」
「30。…じゃなかった。昨日で31になったんだった」
「…あっ!! そういえば、誕生日っ…!」
すったもんだですっかり忘れていた。元々ナオさんの誕生祝いをしようと張り切って帰ってきたところから全てが始まったのだった。当然ながらお祝いはおろかおめでとうの一言すら言ってない。
「そんなのいいよ。こうして今杏がここにいてくれる。それだけで充分だ」
「……」
完全に男性の姿でそんなことを言われたら、今度は私が赤くなってしまう。