百花繚乱 社内ラブカルテット
テーブルに置いた両手が、力の入れ過ぎでカタカタと震える。
鼻の奥の方がツンとして、せり上がってくるような嗚咽を堪えようと、私はギュッと唇を噛み締めた。
その時。


「泣くなら泣いていいよ。俺は困らないから」


頭上から降ってきた声に、私はひくっと喉を鳴らした。


「見ないでほしいなら見ないフリしててやるし、それだけじゃなく慰めてほしいなら、頭くらい撫でてやる。声を殺したいなら、胸くらい貸してやってもいいよ。それとも……」


彼が続けた言葉の途中で、ぼんやりと頭を上げてしまったのはどうしてだろう。
私は、酔いが回ってとろんとした目で、目の前の樫本さんを見つめた。
ちゃんと視界の焦点を合わせているつもりなのに、ユラッと揺れてぼやけて滲む。


「……やれやれ。君の場合、一晩中、思いっきり泣かせてやった方がいいみたいだな」


そう言った樫本さんが、どんな表情をしていたか。
私がなんて返事をしたのか。
どんな反応を見せたのか……。
実はその時のことは記憶が曖昧で、覚えていない。


ただ一言。


「行こうか、古川さん」


樫本さんがそう言って、優雅な物腰で私に長い腕を差し伸べた。
それが昨夜の私の最後の記憶。



だけど、今――。
夜が明けてこんな状態になってるのなら、少なくとも私は、彼の手を取ったということ。
そういうことなんだろう。
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