HARUKA~恋~
昇降口は人で溢れかえっていた。


女子の友達同士で抱擁していたり、離ればなれになって泣いていたりする。

眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな男子は、クラスの一覧表を見て不適な笑みを浮かべていた。
誰と誰が一緒になったからこういう法則だろう、とか分析しているのかもしれない。

ピカピカの高校1年生だった時は、クラス替えや席替えに一喜一憂する人達を鼻で笑っていた私だけど、今思うと、それは友達がいない自分を必死に肯定するためだったのだと感じる。

私は強がっていたんだ。

人に媚びず、甘えず、1人の時間を有意義に過ごしている風を装っていただけ。

本当は私も、くだらないことを素直に喜んだり、笑ったり、泣いたりしたかったんだ。


私は意外と…寂しがり屋、だ。



「ハル!あったよ!!オレとハル、同じクラス!!ちなみに宙太も」


遥奏の声に引き寄せられるように私は遥奏にのいる場所に走って行く。

大勢の人の波を掻き分け、なんとか泳ぎ切り、息継ぎをする。


「どこ?」

「オレ達は、ここ。3年1組」


遥奏の長い人差し指の先に自分と遥奏の名前が連なっているのを発見した。











しかし…











恐れていたことが起こってしまった。












「おーい!はるちん!!おっはよー!!」








来た。

来てしまった。





私は台風のちょうど真下にいる。

突風が吹き荒れ、雷雨が激しく降り出す。




「はるちん、おはよ。あれ、もしかして…」


彼女のくりくりお目めがリストを追って行く。


3番目で急停止し、25番でピタリと止まった。

彼女が満面の笑みで振り返る。



「やったね!今年も同じクラスだよ!!よろしくね~」

「よろしく…」





徐々に水かさが増えてきた。

河川の氾濫まで、あと僅かだった。
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