幸せの構図
ひろし君を愛した女性、ひろし君が愛した女性がこの町、この場所で育った。その同じ空気を今吸っている。嫉妬も何もなかった。穏やかな気持ち。空想の世界ではあったが一人の女性の半生を想った。超高速の映画のように風景が流れた。その中にひろし君との時間、愛し合ったであろう時間も流れた。そして辛い思いをしながらひろし君との別れと再会、そして訣別。

彼女の周波数と同調したかのように、自然と涙がこぼれた。しかし悲しい涙ではなかった。暖かい涙だった。

ふと思った。

「私は誰?」

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