幸せの構図

次の朝、まだ夜が明け切れぬ5時。私は最寄りのタクシーを呼んだ。行き先は松本。10月も半ばを過ぎると朝晩の寒さは身にこたえた。ほどなくしてタクシーが着き、私は軽い荷物と共に乗り込んだ。

「松本駅までお願いします」

「ありがとうございます」

「すいませんね、こんな時間に。徹夜勤務でもうすぐ終わる時間じゃないんですか?ご苦労様です」

初老の運転手だったので安心感はあったものの時間のことを考えるとありがたさと申し訳なさが混在していた。

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