幸せの構図
「彼女はここで降りたけど、お客さん、どうします?」

「はい、もちろん降ります」

「そう言うと思いましたよ。松本まで行きたいとこですけど、しょうがないですね」

「ごめんなさいね」

「いえいえ、私の話が少しでも役だったようなので、それだけで嬉しいですよ」

タクシーを降りると冷気に震えた。りつこもここで降りた。どんな気持ちで始発電車を待ったのだろう。その空気を吸った。
発車時刻まで多少時間があった。近くのコンビニの灯りにほっとしてそこで時間を過ごすことにした。

山の稜線を朝の気配が静かに覆っていた。
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