幸せの構図

外のテーブルに秋の海風を穏やかに受けながらりつことすーちゃんが浜辺を眺めながら向き合っていた。

長いが軽やかなすーちゃんの髪の毛が時折吹く優しい風になびく。穏やかで優しい笑顔が周りの空気さえ和ませてしまう。髪にけぶるその笑顔は遠目からではとても４０歳代には見えない。いや、近くで見ても年齢を言い当てるのは難しいだろう。

対照的にチャキチャキとした明るい笑顔のりつこでさえ穏やかな表情になってしまった。

「きれいな海ですね。それに太平洋はやっぱり大きく見えちゃう」

「私は瀬戸内の海と太平洋しか知らないんだ。ひろし君と同じ秋田の海を見てきたりつこさんがうらやましいわ」

「彼にはまだ未練が？」

「ふふふ、あったらどうする？」

「ごめんなさい。未練も何ももうないんですね。そういうところ、ひろし君と同じでもう越えてるんですね」