幸せの構図
新宿が近づくと首都高はさらに高架になり圧迫感のある防音壁も開放的になった。行く手に都庁をはじめとするビル群が見えはじめた。

私はふと長野から一人でまるでりつこの跡を追うかのように訪ねた一つ一つの場所を反芻した。よく考えると不思議というかよくもそういう偶然を重ねることができたなと感心した。確かに偶然ではあるが2人にとってはそれほどかけ離れた意味のない事でもなかった。

2人の会話の中で時折出てきた私の思い出話し。私の好きだった場所。私にとって因縁の土地。行きたい場所。それぞれ別々にではあったがりつこには全て話した場所だ。その場所を私たちは別々に訪れた。全ての原因が私にあったとしても、それによって実際に動いたのはりつこだ。さらにそのおかげで私も行けた初めての土地や思い出の街、お店、風景。私はその各々の箇所を今度はりつこと2人で訪れたいと思った。
今走っているこの首都高も、ここから見える新宿の街も子供みたいに得意げに見せてあげたい。
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