Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「あと、服とかは真似してます。向井さんが好きな人を真似すれば、手っ取り早く私を好きになってもらえるかと思って。
私、服とか髪とか男の趣味に合わせられる可愛い女なんで」
「……そうなんですか」
「でも、この格好は……正直、あまり好みではないですけど。本当はもっと可愛い感じのふりふりした服とか着たいし。まぁ、向井さんがこういうのが好きって言うなら全然我慢しますけど。
私、健気なんで」
少し不服そうな顔をする女の子に、やっぱり真似されていたのか……と思うと同時に、真似した理由について考える。
つまり、この子は涼太が好きで……そしてたぶん、涼太が私を好きだってことも知っているんだろう。
だから私の真似をして、涼太に好きになってもらおうっていう……そういうことか。
健気……なんだろうか。
女の子のうしろにある大通りを、通行人がぱらぱらと通るのを見ながら口を開く。
「……涼太が、私を好きだって言ったんですか?」
そんなことを第三者に言うとも思えずに聞くと「いえ」と首を振られる。
「でも、見てたらわかります。あんなに特別扱いされてて気付かない方がおかしいでしょ」と呆れた顔をされ、返す言葉がなくなってしまった。
私は……もしかしたら、って考えだしたのもつい最近だから。
「それにしても唐沢さん、ちょっと服装カジュアルすぎません? 毎日こんなシンプルな服着て楽しいですか? つまんないでしょ、絶対」
「……ほっといてください」
余計なお世話だと、呆れればいいのかムッとすればいいのかわからないまま答える。
それから、この子がなんで私を待っていたのかふと疑問に思った。
こんな話がしたかったわけじゃないハズだ。