Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
『おまえらって本当に仲いいよなー。そういうこと平気でするから、俺、最初付き合ってんのかと思ったもん』
今、鶴野に言われたばかりの言葉に、〝私もそうなるものだとばかり思ってた〟と頭の中でだけ返し、曖昧な笑みを浮かべた。
「あーんってしてもらっただけで付き合ってるとか、考えが飛躍しすぎだろ。本当に鶴野はなんでも色恋に結び付けるよな。女に飢えすぎなんじゃないのか?」
呑気に笑う宮地に、鶴野が笑顔をひくつかせる。
「おまえはいいよなー。その女ウケする顔立ちフル活用して人生謳歌しやがって……。正直、すげームカつくのに、男相手でも面倒見いいから皮肉のひとつも出てこないのがまたムカつくわ。
本当、なんなのおまえ。神様に二物も三物も与えられやがってよー」
はぁー、と大きなため息をついた鶴野が「唐沢ぁ、ちょっと聞いてよ」と私を見る。
同期は全員で二十人いて今回は十四人が参加しているけれど、各々グループができて盛り上がっていた。
居酒屋の大部屋には、外まで筒抜けなんだろうなってくらいの笑い声が響いている。
「なに?」
「こないださぁ、宮地と俺とあとひとりで飲んでたんだよ。そしたら隣のテーブルにいたお姉さんが声掛けてきて、一緒に飲むことになったんだけどさぁ」
また逆ナンかー……と思いながら隣を見ると、苦笑いを浮かべている宮地と目が合った。
〝うわ、バラされた〟とでも言いたそうな、いたずらっ子みたいな表情に、胸がとくんと鳴ると同時に痛んだ。
こういうこと私にバラされても、宮地は全然大丈夫なんだなっていうのが表情からわかるから。
「もうお姉さんたちが完全に宮地狙いなの。同じ空間にいるのがツラいくらいにビシビシ伝わってきて、途中からなんか、俺、空気状態だよ。
あれー俺なんでここいるんだろーってすげー悲しかった」
「可哀想に」