Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「ありがと」
「紅茶のおかわりも淹れるねー」
「うん。菜穂の淹れる紅茶はいつ飲んでもおいしいから嬉しい」
ティーポットを持ち上げてキッチンに戻る背中に言うと、菜穂が振り向き目尻を下げる。
「そんなに褒められたら何杯でも淹れちゃう。とびきりおいしいの淹れるから待ってて」
「ありがと。……あ、菜穂はケーキなににする? お皿にとっておくよ」
「んー……って悩んだところでどれもチーズだしなぁ。……じゃあ、レアチーズにするかな」
「ん。了解」
菜穂のお皿に苺ソースのかかったレアチーズケーキを取る。
それから「涼太は? どれ?」と聞くと「ベイクドチーズ」と返ってくる。
「ベイクドチーズでいいの?」
苺タルトかチョコだと思ってたのに……と再度確認すると、むすっとした顔で「いい」と言われる。
「じゃあ……はい」
「ん。おまえはそれ食えば。650円のカロリーのかたまり」
「言い方……でも、ひとつしかないのに……」
「どうせカロリー気にしながらもふたつ食うんだろうし、チョコのも買ってきたから。おまえ、いつも苺かチョコだからわかりやすい」
私がなにか言う前に私のお皿に苺タルトとチョコケーキをのせた涼太は、その際に親指についた苺ソースを舌先でペロリと舐める。
そして呆れたように少し笑い「すげー甘い」と文句を言った。
その一連の様子に、思わず目を奪われ……いつか、宮地が言っていた言葉を思い出す。
『年下なのに変に落ち着いてて色気もある感じ』
色気とかそんなものあるはずないって、その時は思ったのに……。
涼太と色気がしっくりこなかったのに……。
今、見ている涼太はたしかに色っぽくて、見たことのない一面を見てしまったみたいで胸がドキッと跳ねた。
顔立ちが整っているからっていうのも大きいんだろうけど、なんか……なんか、やたらと――。