俺様御曹司とナイショの社内恋愛


まぁ、川本さん、これからよろしくね、沢木がおっとりと口にする。

「あ、はい」
反射的にかるく頭を下げる。

郁の歓迎会なるものが催されたのは、会社からすこし離れたところにある、魚料理とワインを売りにした店だった。

白石がチョイスしたというだけあって、料理と酒は申し分なく美味しかったけれど、メンバーはたった三人でろくに馴染んでもいない面子となれば、どこか気詰まりで、当然あまり会話もはずまない。

ついでに沢木は酒がダメとのことで、一滴も飲まなかった。

「病気してから禁酒になっちゃって」
と曖昧に笑ってみせる。

そう遅くもならないうちに、「じゃあ僕はこのへんで」とそそくさと腰をあげる。
「あとは若い人たちで楽しくやってね」

たしかに飲めないなら、こんな場は目に毒でしかないだろうけど。

・・・二人で残さないでください。

グラスをにぎって、むなしく内心つぶやく。
< 33 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop