俺様御曹司とナイショの社内恋愛
「なるみ先生がキービジュアルを描けるかどうかは重要ですからね」
白石が割って入る。

失礼、となるみ女史にかるく頭を下げる。
「申し遅れました、白石と申します。ゲームの制作に関しては素人もいいとこですが———」

「いえね、なるみ先生、年下攻めのアイディアを出してくれたのは、白石さんなんですよ」

「絵師さん買いをするファンの方もいますから、ぜひなるみ先生にキャラクターデザインをお願いしたいんですが。
今お話をうかがった限りだと、イメージがわきにくいご様子ですね」

ええ、となるみ女史がうなずく。
「従来のゲームだと、年下の男の子は可愛い要員だから、メインキャラで描いたことがなくって。可愛いとか小生意気以外の年下っていうのがね・・・」

なるほど、と白石が低くつぶやいた。
「なるみ先生、彼女は、」と不意に郁をしめす。「僕のアシスタントで、一つ年上で、ついでにいま口説いてる最中なんですが、」

はっ!? 藪から棒になにを言い出す———

思考と身体が完全に硬直する。雪瀬となるみ女史の目は、そろって点と化している。
その表情は、性別も年齢も飛び越えて、不思議とよく似ていた。
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