それはちょっと
手元にある白いバラの花束に視線を向ける。

「捨てたくても捨てられないじゃないの…」

99本なんて、よくこんなにも買えたものだ。

私のお金じゃなくて部長のお金だからいいのかも知れないけれど。

ドアを閉めて中へと足を踏み入れると、花束をテーブルのうえに置いた。

「確かこの辺りに花びんがあったような…」

ベッドの下から細長い箱を取り出すと、ふたを開けた。

箱の中に入っていたのはガラスの花びんだった。

「99本も入るかな…?」

長さも大きさも結構あるから大丈夫だと思いたい。

花びんの中に水を入れて、ハサミでパチパチと斜めに茎を切って長さを調節した。

斜めに切ることで花は長持ちするのだ。

「よし、入った」

99本全部入ることができた。

「本当にもう…」

全部入ったからよかったものの、入らなかったらどうするつもりなんだろう?

そう思っていても、心のどこかでは満更でもないと思っている自分に気づいた。
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