それはちょっと
「南くんの仕事が終わるまで待ってた」

そう答えた部長に、
「えっ?」

私は驚いて聞き返した。

「私を待ってたって、何でですか?」

自分の仕事はとっくの昔に終わってたって言うことですよね?

部長がフッと笑ったかと思ったら、私に歩み寄ってきた。

フイッと顔を横にそらすと、
「口寂しいからキスをして、ですか?」

私は部長に言った。

「えっ?」

そう聞いてきた部長に、
「私とキスがしたいから、私が仕事を終わるのを待っていたんですか?」

私は続けて聞き返した。

チラリと横目で部長を見ると、眼鏡越しの瞳と目があった。

「そう言うの、本当にやめた方がいいと思いますよ?

勘違いをする輩が出てきたらどうするって言うんですか?」

「勘違いって?」

「その…私と部長はできているんじゃないか、みたいな」

何を言わせようとしているんだ、この人は。
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