それはちょっと
周りの視線を部長は気にも止めていないのか、彼は自分のデスクに腰を下ろすと仕事に取りかかった。

すごい、全く動じていない…。

いや、ツッコミを入れるべきところはそこではない。

「やっぱり、あの話は本当なのかな?」

「いや、どうなんだろうね…」

周りからヒソヒソと話をする声が聞こえる――聞こえちゃっている時点ですでにヒソヒソではないけど――けれど、部長は動じていなかった。

と言うか、“あの話”って何の話なの?

やっぱり、部長は何かをやらかしたのだろうか?

もしかしたら、それはどこかの支社へ左遷あるいは会社をクビになる大問題なのかも知れない。

でも、どうして部長は何も言わないのだろうか?

仕事をしている間、私はそのことが気になって仕方がなかった。
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