それはちょっと
「部長が異動になったらどうするんだろうね」

「寂しくなっちゃうなあ」

「でも、どうしてW支社の支社長は会社を継がないなんて言ったんだろうね?

何か理由でもあるのかな?」

「さあ、そこまではよくわからないや」

噂話をしていた社員たちの声が出て行ったことを確認すると、私は個室のドアを少しだけ開けて顔を覗かせた。

そこに彼女たちがいないことを見ると、私は個室から出てきた。

女子トイレと言うものは、いい意味でも悪い意味でも便利なものである。

何しろ、嫌でもいろいろな話が耳に入ってくるのだから。

当然のことながら、彼女たちは私が個室に入って用を済ませていたことに気づいていないだろう。

そんなどうでもいいことを思いながら、私は息を吐くと手を洗った。
< 72 / 90 >

この作品をシェア

pagetop