君を愛した時間〜残した宝物

俺は、セラの心臓に耳をあてた。
(ドックンッ……ドックンッ)
セラの心臓の音は、弱々しく動いていた。
俺は、セラの心臓に耳をあてお腹に手をおいた。
「…セラ…お前も俺達の赤ちゃんも必ず助けてやるからな…」
「…心…」
後ろから直が俺の名前を呼んだ。

「……助けて…くれ…セラも…赤ん坊も助けてくれ……頼む!!」
俺は、直に縋った。
「心!!」
「頼む!!助けてくれ!セラが居なきゃ…俺は…」

俺は泣きながら直の足元に崩れた。
「…心…」
直は、震える俺の肩を抱きしめた。



その日の夜……セラは、そのまま手術室に運ばれた。



セラが居ない病室で俺は一人セラの帰りを待っていた。
「…セラ…俺達…これから三人で沢山……思い…出…作っていけるよ…な…セラ…」
俺は、さっきまでセラが寝ていたベッドに顔を埋めた。
「……心…」
すすり泣く俺の肩を優しくセラのお母さんは、撫でた。
「…お母さん…」
「…大丈夫よ!セラも赤ちゃんも!」
セラのお母さんは、そう言って微笑んだ。
「…うん…」



病室でセラの帰りを待つ時間は、俺にとって地獄のような時間だった。

「…お母さん…」
「何?…」
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