君を愛した時間〜残した宝物
「…皆の所に戻ろう」

「うん」
「セイラおいで」
心は、セイラを優しく胸元に抱え歩き出した。
≪…!?≫
「……ぁ…」
背を向け歩き出す、心の姿が歪んでいく。
「…………」
目を擦り、心の背中を見た。
≪……ちゃんと見える…≫

「セラ!?」
≪…!≫
「ごめん!先に行ってて!私…トイレ」
私は、心に背を向け歩き出した。
「……セラ…」


(ガチャッ!!)

私は、トイレの中で座り込み両手で顔を隠した。
「……何で……」



≪………≫
腕の中で眠るセイラを見ながら、胸騒ぎを感じていた。
「…心?」
「直…」
「どうした?」
「…セラが…」
「セラが、どうした?」

「俺、セラにまだ…」
「…言ってないのか」
「……あぁ…」
「心…」
「セイラ頼む…」
俺は、セイラを直に預け走った。



≪!!≫
「ゔっ!……」
急な吐き気に口元を押さえ私は、洗面所に顔を下げた。
「…ゔっ!!……はぁー!はぁー!……」
顔を上げ汚れた鏡に顔を向けた。
「………セラ…あなたは病気に勝ったんじゃ……」



≪セラ!セラ!ごめん!!≫
暗闇の中に、ポツンと灯りが光る公衆トイレを見つけ走った。
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