天神の系譜の奇妙なオムニバス
「ドリアード!」

死に物狂いで叫んだ。

詠唱も始動キーもない。

しかし。

《リュートさんっっっ!》

彼の手元から突然伸びた蔦が、天守閣の窓際に絡みついて転落を防ぐ。

リュートの精霊術の技量ではない、ただただ、精霊ドリアードがリュートを死なせたくない一心で手助けした故の結果。

リュートはその蔦を利用し、更には遠心力をも利用して。

「おおおおおおおお!」

大きく旋回しつつ、天守閣の障子を蹴破って東郷の死角から跳び蹴り!

その巨体が、僅かに後ずさった。

「…現れた時といい、今といい、珍妙な技を使う…小僧、妖術使いか?」

「どうせ説明しても分からんだろうから、それでいいや」

転落寸前だった事に肝を冷やしつつ、リュートは運足(フットワーク)。

まだ動ける、委縮していない事を確認する。

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