天神の系譜の奇妙なオムニバス
「駄目だ!」

ヴィゾーヴニル・キルドで、ティグルがリュートの奥義を相殺しようとするが、間に合わず。

「がっっっっっっっっっ!」

暴発する雷!

リュートの魔力の枯渇、詠唱の不完全さ、精霊術の未熟さ。

彼に、まだ『精霊女王召喚』は過ぎた技だった。

自然災害級の力を生み出す『精霊女王召喚』を不発にしてしまった代償は大きい。

白煙を上げ、白目を剥いて倒れるリュート。

「リュー君っっっっ!」

レーヴァテインすら放り出して、ティグルは倒れたリュートに駆け寄った。

血相を変えて。

「風の名を謳う、我が名は『ティグル・グリフィノー』。名の契約に従い、血の盟約に応えよ、ロイエ・グィーネ」

リュートより、完璧な女王召喚詠唱。

降臨した風の精霊の女王に。

「頼むよ!大切な、大切な弟なんだ!」

ティグルは縋るように言う。

静かに頷く女王。

彼女はリュートに癒しの風を届け、その止まりかけた心臓に、再びの息吹を与える。

トクン、と。

弱々しく脈打つ鼓動。

そしてそれを繋ぎ止めるように。

「リュート君!」

いつの間に飛行船から降りて来たのか。

衣服が泥水で汚れる事も厭わず、古奈美がリュートの傍らに跪き、遮二無二人工呼吸する。

「死なないで、死なないでリュート君!」

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