天神の系譜の奇妙なオムニバス
その小節。

武才だけでなく、知識にも溢れたティグルは、それだけで気付く。

リュートが何をしようとしているのか。

みるみる顔色が悪くなる。

「リ、リュー君!駄目だよ!それはリュー君には早すぎる!止しな!」

「我が名はリュート・グリフィノー…ここまでは合ってんだよな…」

ボロボロのリュートの体から、光の粒子が立ち昇り始める。

同時に、まだ燻る本堂の瓦礫の山に、雨粒が注ぎ始めた。

いつの間にか、上空には黒雲が立ち込めている。

嵐か。

「えーっと…ちくしょ…こっから思い出せねぇ」

「リュー君!」

ティグルの声は、本気の怒鳴り声になっていた。

「勝たせたくないから言ってんじゃないよっ?危ないから!それはリュー君の魔力じゃまだ早いから!勝負したいならまたの機会にしよう!だからそれは止しなって!」

「あーめんどくせえ!」

リュートは生来の気の短さからか、詠唱を端折ると共に、オリジナルのスペルでその技を繰り出す!

「俺の呼び掛けに応えろ!ロイエ・トールディ!」

固く握り締めた拳に、落雷が宿る!

「グリフィノー拳闘術奥義・雷災のか…」

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