【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「い、や……いや!いやぁぁぁぁ……っ!!!」


「!?」


午前、5時頃。


沙耶が突然、大きな声をあげた。


夜ご飯を片付け、沙耶の眠る部屋の隣の部屋で仕事をしていた俺は、手を止めた。


「いやぁぁぁぁ…!…ぁぁあ!!」


続く悲鳴に、部屋に駆け込む。


「どうした!?」


すると、沙耶は真っ青な顔で、自分の頬を荒く擦っていた。


「血……血がっ!ごめんなさい、ごめんなさい!いや、血がっ……狂わせて、ごめんなさい!こんなつもりじゃ……ただ、ただ、はぁっ、いや、」


異常な光景に俺は息を呑み、


「沙耶!!」


恐怖を目に映す沙耶を、腕に包み込んだ。


「落ち着け、何の夢を見た?」


「……はぁ、ごめんなさい……」


強く、強く、抱き締めてやれば、落ち着いた沙耶が目を覚ました。


「ちょっと、驚いちゃった」


そして、俺を見ると、誤魔化すように笑う。


誰に対しても、沙耶は気丈に笑うんだ。


だから、放っておけなくて。


「ん……」


俺は沙耶の頭を引き寄せて、キスを落とした。


泣かせてみたくなる。


甘えさせて、やりたくなる。


甘えることを知らない、彼女に。


「……ちょっと、待ってろ」


沙耶を置いて、部屋からでる。


そして、隣の部屋に行き、電気を消した。


(明日は休みだし……いいか)


気を効かせて、姉さんが休みにしてくれた分、時間には余裕があるから。


「沙耶、おいで」


沙耶のもとに戻り、目が虚ろな沙耶を腕で包んだ。

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