【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「お兄ちゃんたちにも、ですけど……先生にも迷惑をかけてばっかりですね」


苦笑する、小さな女の子を蝕む病魔がわかるなら。


助けられるのに。


「妊娠中毒症……ですか。まぁ、当たり前ですけど」


僕にわかるのは、ここまでで。


「絶対、助けるから」


こんな言葉がまやかしでも。


わかっていても、沙耶は笑う。


「はい、ありがとうございます」


誰よりも小さく、強い女の子。


「妊娠29週目、双子……」


検査結果を手に、ポツリと呟く沙耶の姿。


「中絶しないで、良かった……」


安堵するその声は、母親そのもの。


「私は、二人の命を殺してしまうところだった……」


自分の身が、余計に危険になったのに。


安堵して、涙する。


ここまで、強い子はいない。


わずか、19歳の少女が。


名前を変え、友を切り捨て、愛する人と離れ、命と引き換えに子供を産み落とす……


ここまで、重いことをする必要があるか?


本当は、ないんだ。


親の勝手じゃない。


生きるためにとった手段で、授かった命。


それを殺すことができないからと、結局、命を彼女は捨てる。


悪循環。



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