【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「まぁ、バレちゃったもんは、しょうがないです。どちらにせよ、私の命はあと一日だろうから……」
聞けば、予定日が明日だと言う。
「雪さんか、お父さんか悩んだんですが……雪さんにお願いしたいことがあるんです」
沙耶は近くの引き出しから、ある箱を取りだし、ふたを開けた。
「……手紙?」
何通あるのか。
ただ、ただ、手紙がその箱にはつまっていた。
「これ、入院してから書き上げたんですけど……渡せる機会はないだろうから、貴方に託したいんです。今夜、皆さん、ここに集まるんでしょう?恐らく、私は病室から出ません。だから、これが最期です」
沙耶は大きなお腹を撫で、微笑んだ。
「それを、私が“眠りについたら”渡してほしいんです」
「“眠りについたら”?」
「はい。“眠りについたら”じゃないと、居場所が見つかってしまうでしょう?私は自分が死ぬことで、泣かれたくない。泣いてくれる人は、家族だけで良い。私のせいで、余計な涙を流してほしくないんです。手に入れた笑顔を、幸せを、柚香にも、真姫にも、手放してほしくないから。だから、“眠りについたら”なんですよ」
やはり、おかしい。
彼女は、自分のことを軽んじすぎている。
価値のない、人間なんていないのに。