【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「父さんは、母さんに薬を盛られてから……約、11年。頑張ったんだろ?なら、16年くらいの放浪は、大したことねぇし……もし、その間に本気で愛した女が出来たんだったら、そっちと幸せになっていいんだぞ?」



すべて、調べはついている。


母さんがやってきたことと、父さんの出ていってからの生活。


知っているから、闇から逃れられたから、言える台詞たち。


「再婚すればいいじゃないか。御園を捨てて、相手の籍に入るのも良し。相手を御園の籍へ引き込むのも良し。ただし、そうなった場合、あんたは孫と息子がいっぺんに出来るわけだが……」


父さんに想いを寄せ、父さんも愛している女がいる。


その女はバツイチで、子持ちであった。


「その女にそんなことが耐えられるか、だな」


「……ほたるのことを、なんで、知っているのかと尋ねたいが、何となくわかるから、尋ねないとして……孫?」


初耳と言う感じの父に、俺はニッコリと微笑んだ。


「今年の三月の終わりから、四月の始めにかけて、俺に子供が出来たんだよ。双子の男女。会いに来るか?」


「う、うん……って……え?」


「16で子持ちになったんだろ?珍しくねぇじゃん。俺、20」


「いや、そういう意味じゃなくて……」


祖父似の父は、狼狽える。


「……相手は?」


「黒橋グループの一人娘、黒橋沙耶」


「……政略?」


「全然。初対面で、殴られたよ」


「……殴られ?」


「霞を食っているような、お嬢様じゃねぇからな。どっちかって言うと、武器を手に返り血を浴びるタイプだ」



思い出すと、今は笑える。


俺たちの出逢いはめちゃくちゃだった、と。


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