【完】☆真実の“愛”―君だけを―2



「……その子を、愛しているんだね」


優しい目でこちらを見、父が微笑むから。


「……ああ。心から」


俺も、微笑み返した。


「会うのが、楽しみだなぁ~」


踏みにじられてきた父さんが、初めて、人間のように見えた。


『ごめんな、ごめんな……俺のせいで……ごめん』


耳に残る、懺悔の言葉。


『父さんのせいじゃないよ』


……昔、言えなかった台詞を、やっと言える。



「なぁ、父さん」


「……ん?」


こんな闇の家に生まれたのに、愛する人は側にいなかったのに、奇跡的に……壊れることのなかった人。


「俺、父さんの息子に生まれてきて良かったよ」


心が歪むことで、いつしか消えていたこの思い。


「俺もお前みたいな息子に恵まれて、幸せだ。俺を救ってくれてありがとう、生まれてきてくれて……ありがとう」



……沙耶は本当に、色々なものを復活させてくれた。


この家で、人としての情を思い出すなんて。


この家のために生きる。


俺の覚悟は、とうに決まっていた。


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